畜産と食品のトピックス (畜産と食品の安全性をめぐるニュース、コメントなど)
3. 鶏インフルエンザからBSEまで  
-畜産物生産現場から見た食の安全- (国際化の中で輸入禁止だけでいいのか)
法定伝染病

山口県で発生した鶏インフルエンザのテレビニュースをご覧になった方多いと思います。

大きな穴を掘って、死んだり殺したりした鶏を埋没している画像を記憶しておられますか。

どうして生きている鳥を殺したり、埋没しなくてはいけないの?それだけ怖い恐ろ しい病気なのか? 
画面から伝わってくる生々しい場面は、この病気がただならぬもので、何かが違うと感じた人も沢山いるでしょう。

実は私もこれと同じよう自分の鶏と、仲間の養鶏場の鶏を、殺し埋葬した経験があります。

いまから38年前1967年のことです。

その頃私は横浜の田舎で養鶏場を経営しブロイラーの種鶏と、採卵鶏を合計2000羽ほど飼育していました。
現在と違い養鶏業の規模はこのようなものでした。

そのときは、鶏インフルエンザではなく、
ニューカッスル病という、やはり呼吸器障害、臓器不全を起こす、
致死率の高い感染症が、私はじめ近所の仲間の養鶏場に発生し、
それがため沢山の鳥を殺し埋葬しざるをえなかったのです。

日本には家畜の安全を守るため「家畜伝染予防法」という法律があります。
この法律は家畜の伝染性疾病の発生を予防し、さらに蔓延を防止して畜産振興を図るため につくられたものです。

この法律の中に「家畜伝染病」と定義する病気の範囲があって、この病気に感染した家畜は、家畜保健所の判断で、
移動禁止と生産物の持ち出し禁止、さらに殺処分 することを指示できるとなっています。
これが一名「法定伝染病」と称されている病気です。

ニューカスルも家禽ペスト(鶏インフルエンザ)も、この法律が適応される疾病ですので、
死体および殺処分した鶏は、他への感染の危険性が無いよう、焼却あるいは埋没しなければならないことになっています。

私も私の仲間も、この法律の適用にしたがって、
自分が手塩にかけて育てた貴重な財産を、自らの手で殺さなければいけなかったのです。

法律というものは過酷のものです、法の名の下で命令されたことは、どうあっても 粛々と従わなければならないことは、
法治国家の国民としては分かっていても、抵抗がありました。

一夜にして空になった鶏舎の中に入って「さてこれからどうしようか」
しばし考えがまとまらなっかたことを思い出します。

法の名の下に財産を奪われても、一銭の保証もありませんでした。いわば病気を出した責任の方が重いのです。
この発生でさらに大きく被害を広げる罪の方が優先するのです。

しかし、私もこの病気が何処から感染したかも分かりませんでした。その意味では 被害者の一人です。

ましてその頃、この病気の発生は、今のインフルエンザと同じよう、わが国では発生の過去がなく、
病気診断した家畜保健所の獣医師にしろ、初めての経験だったはずです。

家畜保健所には、若干のワクチンの備蓄があって、それを補助金助成で安く分けてもらい、
感染していない鶏に急遽接種しましたが、全ての鶏に行うだけの数量がなく、残りは感染死を待つだけでした。
合計で約300−400羽ほどを死んだり殺したりして埋めた経験があります。

そんな思いが、その後の家畜農場経営の根底に絶えず残っていまして、
経営の判断や衛生対策の指導の指示に影を落しました。

そして今回、鶏インフルエンザで埋没される鳥の遺体を、遠い昔の自分の思いとダブらせてテレビで見ていました。

ただ聞くところによりますと、幸いのことに行政から見舞金もあるようで、時代の変化だなーと、
今昔の感を深くしています。(続く)

 

      2004/4/9
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