畜産と食品のトピックス (畜産と食品の安全性をめぐるニュース、コメントなど)
3. 鶏インフルエンザからBSEまで  
-畜産物生産現場から見た食の安全- (アメリカ牛肉輸入禁止で思うこと)
わが国の狂牛病発生の責任

そこで今回の輸入禁止のアメリカ産の牛肉の問題をここで考えましょう。

狂牛病(BSE)は確かに怖い病気です。
数年前イギリスを始めヨーロッパ各地で発生、その肉を食べた人間までも、脳障害を起こし死亡している事実は深刻です。

その原因は羊の脳炎から始まります。
脳炎にかかった羊の死体を再利用して肉骨粉とし牛のえさの蛋白源として使用したところから始まります。

このとき誰が今日の世界的な牛肉問題になると思ったでしょう。

欧米始め、日本、東南アジアの飼料、 畜産業界では、と殺処理した後の膨大な残渣物を熱処理し、
再度飼料原料として使うことは、かなり以前から常識的に行われていました。
また廃棄物リサイクルの観点からも大切な処分方法で、飼料としては高蛋白質の優れた原料でした。

これらの肉骨粉を、ヨーロッパより大量輸入していた国の一つに日本があります。

その中に、牛を原料にした製品も多くありました。
結果それらの飼料を食べた牛から狂牛病が発生したことは、耳目に新しい出来事です。

以前よりヨーロッパ、ことにイギリスの狂牛病の発生は世界中の話題になり、 その原因になった肉骨粉の使用は、全面的に禁止していたにもかかわらず、 日本は輸入制限をしようとはしませんでした。

ヨーロッパより、狂牛病の発生の恐れがある旨の注意勧告があったにもかかわらず それを無視してきたのが日本の農水省です。

注意されたその都度、日本には狂牛病の発生は1頭もなく、その危険状況も皆無です。
心配ご無用との態度をとり続けました。

もっとも輸入業者と畜産業者には、狂牛病の恐れがあるので気をつけて使用する様通達は出していましたが、 禁止をしていませんでした。

これは大変な問題です。「この責任はどうする」狂牛病発生と同時に日本の世論は沸騰しました。
ことに農水省の怠慢は厳しく追及されました。あわてたのが農水省でした。

その結果牛の生産履歴をはっきりさせるトレーサビリテーを実施したり、 全ての牛を検査することで、消費者の安心感を取り戻し、農水省としての汚点を取り戻すべき体制をつくりました。

当然狂牛病発生国からの牛肉の輸入禁止、畜産動物への肉骨粉の全面禁止などの消費者への安心と同時に、 今後絶対二度と狂牛病を出さない、出ない条件作りを徹底的に実行しました。

狂牛病が出るまでの怠慢を覆い隠すような熱の入れ方で、 そのため牛以外から生産した動物蛋白源まで禁止令を発したほどでした。

まさに「羹に懲りて膾を吹く」(あつもりにこりてなますをふく)の譬えどうりです。

それほどに狂牛病を発生させた恐怖は深く、 食肉生産の安全性はじめ、あらゆる食品の安全性確保など、その対策と体制作りをヒステリックに行いました。
二度と狂牛病は出さないが農水省の省是となったそのとき、 牛肉の最大輸出国のアメリカからBSE発生のニュースが飛び込んできたのです。

これは大変なことになりました。狂牛病はいまや日本の厚生省、農水省のトラウマです。
誰がなんと言おうと、発生国からの輸入は断固阻止しなければなりません。

まして「全頭検査」を実施したばかりの、日本の牛肉生産の基本姿勢にひびが入ります。

それでも、アメリカが政治的圧力を含め輸入を迫ったら、 日本と同じ検査法をとってもらはなくては、国民に約束した「食肉の安全」が守れないとの建前で、 対アメリカとの牛肉輸入交渉になったのです。農水、厚生省の面子をかけての方針です。

この交渉は、検査方法の違いがあって、妥結する結果にはなりませんでした。その結果街から「牛丼」が消えました。(続く)

 

      2004/4/19
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