畜産と食品のトピックス (畜産と食品の安全性をめぐるニュース、コメントなど)
3. 鶏インフルエンザからBSEまで  
-社会問題化した鶏インフルエンザ- (生産現場から見る行政の構造)
自殺者までだした病根

それより日本ではこの鶏インフルエンザが、大きな社会問題化していることに驚いています。

それに追い討ちをかけるように、京都の発生農場の会長夫妻が、 その責任を取って自殺したニュースはやりきれない思いです。

たしかにインフルエンザの感染があったと気がついていたにもかかわらず、 それの届け出の義務を怠った罪、まして急ぎ病死してない生鳥を処理場に販売した罪はま ぬかれません。

テレビのインタビューで「はじめ腸炎と思った」と息子社長が答えていましたが、 腸炎はいろいろな病気で起こり、細菌性のものもあり、インフルエンザと間違えるはずは、 ベテラン養鶏業者だったら絶対ありません。

「元気の無い悪い鳥を淘汰出荷するのは養鶏業の常識」とも語っていました。
ある面正しく、ある面大いに間違っています。

私も昔養鶏業を営んでいた頃、病気に掛かった鳥や、卵を産まなくなった鳥は、肉屋に販売していました。
それは40年前の話です。

自転車の荷台に鳥かごを乗せ、養鶏場を回っていらなくなった鶏を買い集める業者がいまして、 病気の鶏は安く、健康な鶏は相場で買い取ってもらっていました。

しかし現在は違います。鶏肉市場も肉専門に改良されたブロイラーが主流で、 卵を産んだあとの鶏は、廃鶏と言って二束三文の値段で取引されます。
おもに加工品の材料やスープストック、ペットフードの原料になります。

まして病気に掛かった鳥は市場は引き受けません。
焼却処分するか、レンダリングプラント(肉用にならない動物、残渣物を加熱処理して肉骨粉にする工場)で処理します。

そんな市場なのに、何故急いで売りに出したか、理解に苦しむところです。
そのうえ「法定伝染病」と知っていて売ったとしたらここが問題です。

この真相は亡くなった経営者が本来語るべきでしょうが今はできません。

さて何故自殺したかの背景を推察しますと、 この経営者は、鶏インフルエンザが飛び火拡大し、業界関係者の怨嗟の的となり、社会問題化し、 さらに行政当局の「刑事告発」をとの発言があり、 初期判断の間違いの大きさに耐えられなくて、自分の命を絶たざるを得なかったのでしょう。

小羽数の鶏からスタートして40数年、努力に努力を重ねて、 大羽数の養鶏場にま で拡大された成功者とも言える人だったでしょうが、 畜産農家の経営者が陥りやす い自己中心的な経営感覚がなかったか、 何事も他人と相談せず自分のことは自分で解決してしまおう、という性格がなっかたとは言い切れません。

まして鶏インフルエンザなどという、大それた病気が自分の農場から出たと分かれば、 他人はなんと言うか知れない、また移動禁止が出れば多く同業者に迷惑が掛かる、 できたら人に知られず他人に損害が出ないよう、内緒で処分しようと思ったに違いありません。

おそらく過去にも、病気の種類は違うが、発表せずに自分達で解決した届出伝染病がかなりあったかもしれません。
この問題はこの農場だけの問題でなく、多くの畜産農家が抱えている深刻な問題です。

前回も申した通り、公式機関に通報することによる業務上の損害の発生が計り知れないので、 できるだけ自分達で解決しようとします。
その是非は別として、自分達で解決すれば損害が少なく、 さらに周囲の畜産農家に迷惑が掛からない、との判断が先行します。(続く)

 

      2004/5/10
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