畜産と食品のトピックス (畜産と食品の安全性をめぐるニュース、コメントなど)
5. トレーサビリティについて  
トレーサビリティー TRACEABILITY = TRACE+ABILITY 追跡する能力
安心して食べられる食物つくりとは

食の安全性が今年ほど問題になた年はないでしょう。
日本を代表する食肉会社や、乳業会社、農業を統括する農協までが不当表示をはじめ、 補助金の搾取など偽装工作に走った事実は困ったものでした。

 無許可の農薬、添加剤、薬品の使用などもありました。
まして中国から輸入さ れた野菜からの基準を大幅に超えた農薬の検出や、 ダイエット目的の健康食品 被害は、健康食品に対してのイメージダウンにもなりました。

 BSE(狂牛病)騒ぎによる牛肉離れは、最近になってようやく戻りつつあるようですが、 そのショックは消費者にしばらくの間は消えないでしょう。

 こんな状況を背景に、 日本政府も食の安全を「生産現場から食卓まで」保障できるシステムを発足させようとしています。

 それを「トレーサビリティー」といいます。
英語で Traceability(さかのぼって足跡を調べる)というスペルになります。

 これはBSEの大発生で、牛肉の信頼度が極端に減少したイギリスを始め、 EU諸国が、牛の安全性を確認する手段として、開発されたものです。
 牛の誕 生から成牛となり市場に出て肉になり、消費者に渡るまでの個々の牛の履歴と 飼養状況を、
トレース(Trace)してBSEの疑いがないことを、遡って調べることの出来るシステムです。

 生まれた牛は、全て戸籍が作られ、記号と番号でそれが登録され、 その番号が 耳タックの標識に書き込まれ、個々の牛に取り付けられ、 成長し肉になったり、 乳を生産したりする現場まで、この登録番号と耳タックはついて回り、 飼育状 況の記録明細が分かることになります。1996年から始まりました。

 確かにBSE発生が問題になった頃、どの牛から発生し、またどの牛は安全かが皆目分からず、 疑わしいのは全て処分した経過がありましたので、 その可否を判断するシステムとしては、成功でした。

 日本でもBSEが昨年秋発生してから、その原因になったと思われる、 飼料を 摂取したものをはじめ、徹底した検査制度を実施して、安全を図ってきました。
 屠殺するもの全てを検査して、安全を確認しましたが、 莫大な費用がかかっる のと、生産者の危機管理意識の低さを痛感した結果、 消費者の意識に沿った制 度として、EUで実施し成功しているトレーサビリティー制度を、 スタートさせたことになります。

 このトレーサビリティーは、何も牛肉に限ったことではなく、農産物、畜産物、 水産物など生鮮食品全てに当てはまります。まして食品工場は最も真剣に取り組まなければならないシステムです。

 さて具体的な方法は、農産物を例にしますと、どんな種類の野菜タネを、 何月蒔いて、どんな農薬と、肥料を使って何日に収穫したのか、 この情報を商品に つけて消費者に知らせることになります。
もしできなっかたら、消費者が知り たいと思ったとき、 インターネットのホームページで知らせるか、書面で知らせる義務が発生します。

 肉も卵も生産された農場と、使用した餌、薬品を明記し、 何日間飼育した肉で あるか、何日の年齢の鶏の卵なのかが分かるシステムです。

 有機食品がもてはやされていますが、 本当の有機は、作付けした畑の過去の肥 料、施薬の歴史も必要で、 少なくとも3年さかのぼらなくてはいけないでしょ うし。
また有機のため使う肥料、病虫害を防いでいる方法なども、詳細に銘記する必要があります。

 有機肉卵の、最も厳しい条件は、餌も無農薬で栽培した原料でなくてはいけないことになります。
その鶏や豚に薬品を使用しなかっただけでは有機になりま せん。
こんな情報をうそ偽りなく開示するのが本当のトレーサビリティーでし ょう。

 食の安全を図るための方法として、HACCPもあります。
危害分析重要管理点(hazard analysis critical control point)で、 食品の製 造過程で病原菌や不純物の汚染が無いようにするシステムで、 危害を分析しそ の原因を招いた状態を管理改善する方法です。
ことに重要なことは製品が出来 るまでの全ての情報を記録して、もし事故がおきたときは、 直ちにその原因究 明に記録を分析すると、 すぐにその問題点を見つけ出し、改善することが迅速 です。

トレーサビリティーも記録をつけることには変わりありません。

 このように食品の安全性の確保に本腰で取り組むようになって来ました。
今ま でどちらかというと、生産者寄りのスタンスが目立った農水省でありましたが、 これからは消費者に軸足を置いた行政を心がけるようです。

 いずれにしろ安全で「誰が何処でどう作ったか」がはっきりすると消費者の心 配は少なくなります。
これは食の革命ともいえるでしょう。そうして消費者の知る権利と、 生産者の教える義務が常識となるでしょう。

 

      2004/2/18
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